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特別インタビュー

食育ドキュメンタリー映画『いただきます』アンバサダー辻かおりさん

私たちにとって“食”とは何か、その大切さを子どもたちの姿を通して描いたドキュメンタリー映画『いただきます』のアンバサダーとして活動する辻かおりさんに映画の見どころをお伺いしました。

食べたものが、わたしになる。
You are what you eat.

“食”によって育まれるのは生きるための力すべてでした。

子どもたち自身の手でみそづくりを行い、そのみそを使った和食給食を取り入れている福岡県 高取保育園。映画『いただきます 〜みそを つくる 子どもたち〜』は、その素晴らしい子育てを一年間追いかけたドキュメンタリーです。
この映画でまず観ていただきたいのは、高取保育園で生活する子どもたちの目の輝きや集中力、自ずから背筋を伸ばして、正座して先生方の話を聞く姿など、ふとした佇まいの美しさ。「こんな子供たちが今もいるんだ」と驚かれる方も多いかもしれません。誰かが話をしているときはすごい集中力で聞き取ろうとする一方で、休み時間になった途端に爆発するように力いっぱい遊ぶ。そのコントラストには感動すら覚えます。ここの子どもたちは“食育”によって大和魂といってもいいような精神がちゃんと育っている。この映画を沢山の方に見て頂きたい気持ちがありますが、特に小さなお子さんを持つ女性はもちろんですが、教育に携わっておられる方々にもぜひ観ていただきたいと思っています。また心身に何か不調を感じておられる方々にとっても、食べたものが今の自分を形作っているんだという観点を知っていただくための、チャンスになるものだと確信しています。

“食”の大切さを教えてくれる子供たちの姿

私個人としても、これまで「食」の大切さを伝える講座やプロジェクトを行ってきた経緯がありますが、伝えることの難しさと楽しさの狭間を行ったり来たりする事も。そんな中で、この映画「いただきます」に出会い、良い衝撃を受けました。
まだ小さな”子ども”という素直な存在が、彼らの身体や眼差し、佇まいなどを通してこんなにも私たちに受け取りやすく、“食”の大切さを伝えてくれるのかと。
私が直接出会って、お伝えできる人数には限りがありますし、また大人と大人の言語を通してのコミュニケーションでは伝えきれなかったかも知れない何かを「この映画を見てもらうことで、伝えられるかも知れない」という気持ちが自然と湧いてきました。
そうして、この映画「いただきます」を〜中略〜思いが強くなっていったと同時に、ご縁が重なり、アンバサダーとしてのお役目を頂くこととなりました。
海外の方にも観てもらいたい気持ちが私には当初からありましたので、海外在住の日本人のための上映会ツアーを企画したのがアンバサダーとしてのスタートになりました。
もともと監督のVINさんにも、この作品を英語圏の方にも観て頂きたいいうイメージがあったようで、英語版制作についても意気投合。今は字幕翻訳のお手伝いもさせて頂いたりと、英語版の制作も進行中です。

知育・体育・徳育 それを根っこから支える“食育”

映画『いただきます』に登場する高取保育園の西園長のお話の中で、「知育・体育・徳育の根源に“食育”がある」というものがあります。これはまさにこの映画が教えてくれるメッセージを体系的に表していると思っています。
考える力を育て、体を鍛え、そして心を育むといった全ての教育は、食育がしっかりしていてこそ。
身体だけじゃなく、精神を養っていく「食」のちから。心身が正しく養われるならば、その上になされる全ての教育は子どもたちの中にすぅっと入っていく。この映画に出てくる高取保育園の子どもたちの姿が何よりの証拠と言えるかもしれません。
発酵学の第一人者としても高名な東京農業大学名誉教授の小泉武夫先生にもご出演頂いています。映画の合間に先生の専門家としての視点や説明を補足してくださるのですが、観てくださった方からは「こういった学識者の言葉があることで、より納得して映画のメッセージを受け取れました」という声も頂きました。

「医食同源(いしょくどうげん)」
食べたものが、わたしになる。

これは一見当たり前のことように思われるかもしれません。食べたものは、私たちの血となり肉となり、身体を形作る元になっていきます。でも、それだけじゃない。私自身の体験としても言えるのですが、食べるものが変わると"精神"まで変わるんです。ちょっと想像し難いかも知れませんが、感情のあり方、考え方、発想の仕方にも大きな影響があるということを、きっと高取保育園の子どもたちの姿から感じ取って頂けるのではないかと思います。
"自分たちが日々何を食べるか"の選択が、心身や暮らしの質にどのように影響を与えているかについて、少し立ち止まって見直されるきっかけになってくれれば、嬉しいですね。

自分で作ったものは美味しい 5歳児が作る「手作り味噌」

高取保育園で行われているみそづくりは、5才の年長さんが担当します。みそは1年かけて仕込むものなので、自分たちが作ったみそを食べることはできません。後輩たちに食べさせるために作るという、とても責任感のある仕事なんです。来年食べる皆に、どんなお味噌を食べて欲しい?」との先生の問い掛けに「美味しいのを作りたい!」「心を込めて作りたい!」という気持ちが次第に湧いてきて、真剣に取り組み始める。食をつなげる、命をつなげるという”食育”の体系を、高取保育園の先生方は時間をかけて、根気強く作ってこられたのだなぁと思います。

「身土不二」(しんどふじ)
私たちの身体と土は、元を正せば同じもの

映画の中でも出てくるこの「身土不二」という言葉。自然の摂理に沿ったもの、気候風土に合ったものを頂くことが大切なのだと思い出させてくれます。
昔から「三里四方のものを食べる」といわれるように、徒歩で行ける範囲のものを食べていれば健康に暮らせるという考えがありました。同じ環境(土)で生命を育んだ作物を旬の時期に頂くことが、その環境に暮らす人の身体が、その季節に順応して、日々はつらつと過ごせるよう整える力を一番高めてくれるということですね。
最近は都市部に暮らす方も多いので、徒歩圏内で食材をすべて揃えるということは難しいとは思いますが、例えば「外国産よりは、国内産」「遠くの都道府県よりは、住んでいる都道府県産や市町村のもの」という風に、幾つかの選択肢がある場合に「より近い産地があるかしら?」と気にしてみるところから始めるのも良いスタートになると思います。

「一物全体」(いちぶつぜんたい)
生命をまるごといただく

米は、玄米で食べるとほぼ完璧な栄養バランスを持つと言われていたり、また野菜の栄養素は皮の部分に一番詰まっているとも言われます。例えばさつまいもを食べた時のもたれ感は皮ごと食べれば皮に含まれる成分が解消してくれます。「まるごといただく」ことは、優れた栄養バランスを受け取れるだけでなく、体内に入った後の消化をサポートしてくれる代謝要素まで入っていたりと、生命力を豊かにしてくれる食べ方と言えるのではないでしょうか。

「元気」ではなく、「元氣」。

今私たちが何気なく使っている“気”という漢字。本来は“氣”と書かれていたのをご存知ですか? 气の中にあるのは“〆”ではなく“米”。お米こそ、元気の源となる主要な食べ物なんだと感じ取ることができますね。食の欧米化が急速に進んだことや、炭水化物を極端に控えるダイエットの流行などで、お米を食べない方が増えていると聞きます。私は自然農法を学ばせて頂いていた頃に、田んぼで稲を育てる経験を初めてしたのですが、その凜とした佇まいに、神々しさを感じました。それまで畑で野菜など他の植物を育てたりもしていましたが、その時の感覚とは全く異なる、独特の存在感とエネルギーを稲から感じ取ったんです。田んぼで稲に囲まれて、ただ佇んでいるだけで、心の奥の方が震えて、気づかぬ内に涙が溢れ出ていることもありました。ある台風が来た後日、先生の田んぼを訪れる機会がありました。周りの農家さんの田んぼの稲が軒並み根元から倒れ込んで被害を受けている状況の中、先生の田んぼの稲だけは何事もなかったかのように、いつもの凜とした美しい姿を保っていました。自然の理に沿って育つならば、本来の強さと美しさを備えることができるのだと稲から教えてもらいました。と同時に、この稲のように正しく育まれた食べ物を日々の食事に取り入れることで、私自身もあんな風に強く、美しく大地に立てるようになりたいと感じたのを覚えています。食べたものが私になる "You are what you eat."

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